さて、ここからは、五感を締めくくる性交についてお話しします。「はじめに」と 1章でお話しした卵子と精子の直接的な出会いです。性行為に至るまでに、相手を見て、相手の体臭を嗅いで、声を聞いて、舌でたしかめました。性行為は、その確認作業の結果、最終段階まで行ってよいとのOKサインが出たということです。しかし、性交して「めでたし、めでたし」ではありません。性交の途中でも終わった後でも、相手が自分にとってふさわしいのかどうか、確認しているのです。1~3章では、こう述べました。男性にとっての理想の女性は、健康で、自分の子どもを、たくさん産んで(高い生殖力を持ち)、その子どもを上手に育ててくれる女性であると。また女性にとっての理想の男性は、食料獲得能力に優れるほどたくましく、その獲得した物を充分に分け与え、母子を守ってくれるほどに優しい男性であると。それを確認する作業が恋愛のプロセスで、五感を使って、自分にふさわしいかどうか確認してきたのです。その結果、性行為に至るわけです。一度でも性行為をする以上、妊娠する可能性があるわけなので、とりあえずの恋愛の終着点ではあるのですが、その後の関係の断絶(ふるということ)も視野に入れなければなりません。性行為に至るまでは、お互い相手の気持ちを獲得しようと、うそも多少はついてきたはずです。あるいは自分の好きだという気持ちが強すぎて相手の心が見えなかったことも考えられます。あるいは、セックスしたいという性欲がありすぎて、相手を性欲の対象としてしか見られなかったかもしれません。性交後は、それらがすべて取り除かれた状態になります。男女の本音が見えてくるのです。そこでもし「こんなはずではなかった」と期待はずれな事態になれば、関係を清算することも考えなければならないのです。とくに、性行為は女性にとっては関係の始まりですが、男性にとっては終わりの始まりです。力関係が逆転する瞬間でもあります。男性が急に「釣った魚にえさはやらない」状態になることも充分に考えられます。それでも関係を続けていくか真剣に考えなければならないこともしばしばです。たとえば、雑誌の恋愛相談で、「最近彼が急に冷たくなったんですが、どうしたらよいでしょうか」「私が結婚の話をすると、彼ははぐらかすので、真剣に悩んでいます」などというものがありますが、この男性の心中は、手に取るように見えてきます。前者の彼は、すでに「釣った魚」にはえさはやらないと決めているかのようですし、後者の彼は、彼女との性交は現状で得られる責重な財産だが、恋愛という熱は下降気味である。熱は冷めたが、セックスができなくなるのは痛い…、このような本音が見えてしまうのです。

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